第30章 三つ子の魂百まで

彼女は胸元を押さえ、はあ、はあと大きく息を吸った。今にも心臓発作が起きそうな顔で、体重ぜんぶを黒谷優に預けている。

黒谷優は反射的に腕を伸ばし、支えた。

顔を上げた瞬間、視線が南坂海乃の――氷みたいに冷たい目とぶつかる。

海乃の腕はまだマークの腕に絡んだまま。黒のロングドレスが白い肌をいっそう際立たせ、気品があって、手の届かないほど遠い。対して自分の腕の中には、わざとらしく倒れかかった女。

……笑えるほど、皮肉な絵だ。

「離して」

南坂海乃は、絡み合う二人を見ても怒りは見せない。ただ、薄い吐き気のような嫌悪だけが滲んだ。

彼女はマークの腕を軽く叩き、淡々と言う。

「マーク、行...

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